介護事務として働き始めたばかりの頃、電話応対に不安を感じる方は多くいらっしゃいます。
利用者様やご家族、ケアマネジャー、医療機関など、さまざまな立場の方からのお電話に適切に対応するのは簡単ではありません。しかし、正しい知識とコツを身につけることで、必ず上達できます。
今回は、介護事務の電話応対について、初心者の方が安心して業務に取り組めるよう、実践的なアドバイスをお伝えします。
介護事務の電話応対で覚えておきたい基本マナー

介護事務の電話応対では、一般的なビジネスマナーに加えて、介護業界特有の配慮が必要です。
まず、電話に出る際は「お電話ありがとうございます。○○介護サービスの△△と申します」と、明るくはっきりとした声で挨拶しましょう。
相手の方が高齢者の場合は、ゆっくりと話すことを心がけてください。聞き取りにくい場合もあるため、重要な内容は復唱して確認することが大切です。
また、専門用語はなるべく避け、分かりやすい言葉で説明するよう注意が必要です。例えば「要介護認定」を「介護の認定」と言い換えるなど、相手の立場に立った言葉選びを意識しましょう。
よくある電話内容と適切な対応方法
介護事務に寄せられる電話の内容は、ある程度パターンが決まっています。主なお問い合わせ内容と、それぞれに対する適切な対応方法をご紹介します。
サービス利用に関するお問い合わせ
「デイサービスを利用したいのですが」「ヘルパーさんをお願いできますか」といったサービス利用に関するお問い合わせは最も多い内容です。
このような場合は、まずお客様のお名前と連絡先を確認し、どのようなサービスをご希望かを丁寧にお聞きします。その上で「詳しい内容につきましては、担当者より改めてお電話させていただきます」とお伝えし、折り返しの連絡時間を確認しましょう。
専門的な内容については無理に回答しようとせず、適切な担当者におつなぎすることが大切です。
利用料金に関するお問い合わせ
利用料金についてのお問い合わせも頻繁にあります。介護保険の自己負担割合やサービス内容による料金の違いなど、複雑な制度に関する質問が多く寄せられます。
請求書の発行時期や引き落とし日、支払い方法の変更など、事務的な内容については介護事務で対応できる範囲もあります。まずは、どのような内容のお問い合わせかを確認し、事務で回答できるものは丁寧にお答えしましょう。
一方で、個別のサービス内容に基づく料金計算や介護保険制度の詳細については「料金につきましては、お客様の状況に応じて詳しくご説明させていただきたいと思います。担当者より折り返しお電話いたします」とお伝えし、連絡先と都合の良い時間帯を確認しましょう。
困った時の対処法と上司への報告のタイミング

介護事務の電話応対では、時に答えられない質問や対応に困る状況に遭遇することがあります。
そのような場合は、無理に答えようとせず「申し訳ございません。確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか」と一度保留にして、上司や先輩に相談しましょう。
特に以下のような場合は、必ず上司への報告が必要です。
- 苦情やクレームを受けた場合
- 事故やトラブルの報告があった場合
- 法的な内容に関する質問を受けた場合
- 利用者様の状態に関する重要な変化の報告があった場合
困った時は一人で悩まず、迅速な対応が大切なので、すぐに上司や先輩スタッフに連絡を取りましょう。誤った返答がトラブルの原因になることもあるため、確実でない内容については無理に答えず、適切な担当者に確認することが重要です。
電話応対でよくある失敗例と改善策
介護事務の電話応対では、慣れないうちに陥りがちな失敗があります。よくある失敗例を知っておくことで、同じ間違いを避けることができます。
専門用語を多用してしまう
介護業界で働いていると、つい専門用語を使ってしまいがちです。しかし、利用者様やご家族には理解が困難な場合があります。
改善策として、利用者様やご家族と話す際は、常に相手の立場に立って、分かりやすい言葉で説明することを心がけましょう。専門用語を使う場合は、必ず簡単な説明を加えるようにしてください。
メモを取らずに対応してしまう
電話の内容をメモに取らずに対応すると、重要な情報を忘れてしまったり、他のスタッフへの引き継ぎが不十分になったりします。
必ず電話対応用のメモ用紙を準備し、相手のお名前、連絡先、用件、対応内容などを記録するようにしましょう。
情報の伝達漏れ
電話で受けた内容を担当者に伝え忘れてしまうことは、よくある失敗の一つです。メモを取っただけで満足してしまい、肝心の情報共有ができていないケースがあります。
改善策として、メモを取った後は、すぐに伝えたい人のデスクに貼っておくか、直接手渡しするようにしましょう。急ぎの場合は、内線電話やメールで即座に連絡することが重要です。

伝達漏れは信頼関係に大きく影響するため、確実な情報共有を心がけてください!
電話応対を上達させるコツと心構え
電話応対のスキルは、日々の積み重ねによって向上します。以下の練習方法を試してみてください。
介護や福祉の専門用語を覚えておく
介護保険制度やサービス内容に関する専門用語を正しく理解しておくことが重要です。要介護認定、ケアプラン、介護度などの基本的な用語から、各種サービスの特徴まで幅広く学習しましょう。
専門用語を理解していることで、お客様からの質問により適切に対応できるようになります。
ご利用者の状況と配慮事項を知っておく
定期的にお電話をいただくご利用者様については、お名前やサービス利用状況、ご家族構成などを覚えておくと、よりスムーズな対応ができます。
特に新規でサービスを開始されたご利用者様の情報を覚えておくことが大切です。また、体調がすぐれない方や認知症があって会話が難しい方などの状況を理解しておくだけで、対応方法が大きく変わってきます。
利用者台帳や一覧表を活用して、基本情報とともにこうした配慮事項も把握しておきましょう。

お名前を覚えて「いつもお世話になっております」とお声がけできると安心感を与え、信頼関係の構築にもつながりますよ!
よくある質問と回答例を整理して手元に置いておく
頻繁に寄せられる質問については、回答例を事前に準備しておきましょう。慣れるまでは、カンニングペーパーを見ながら対応しても構いません。
特に電話が苦手ば方は、さまざまなパターンの電話を想定して、ロールプレイングを行ってみるのもおすすめです。
さらに、自分の電話応対を振り返る時間を作ることも大切です。どのような対応が良かったか、改善すべき点はないかを定期的に見直しましょう。
職場の基本情報を覚えておく
自分の職場の電話番号や住所、営業時間などの基本情報は、お客様から頻繁に質問される内容です。これらの情報をすぐに答えられるよう準備しておきましょう。
また、グループ内に複数の事業所がある場合、間違い電話がかかってくることもよくあります。グループ各事業所の連絡先や担当サービス内容を把握しておくと、適切にご案内できて信頼度が上がります。
基本情報をまとめた一覧表を作成し、電話のそばに常備しておくことをおすすめします。
取引先の情報を把握しておく
ケアマネジャーの事業所や医療機関、他の介護サービス事業所など、取引先についてもある程度把握しておくことが大切です。こちらも連絡先や担当者名を一覧にしておくことをおすすめします。
特に変わった名前の事業所や長い名前のところは、電話で聞き取りにくい場合があります。事前に正式名称や略称を覚えておくと、お客様との会話がスムーズに進みます。

一覧表は定期的に更新することも大切です!
電話応対に自信を持って介護事務として成長しよう
電話応対は介護事務の重要な業務の一つです。最初は不安に感じるかもしれませんが、正しい知識と継続的な練習によって必ず上達できます。
大切なのは、相手の立場に立った丁寧な対応を心がけることです。分からないことがあれば一人で抱え込まず、遠慮なく上司や先輩に相談してください。
利用者様やご家族との信頼関係を築く第一歩として、日々スキルアップに努めていきましょう!