介護事務と医療事務は、いずれも人気のある福祉・医療系の事務職です。しかし、どちらも未経験の方にとっては「どう違うの?」「どっちが自分に合っているの?」と迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
この記事では、介護事務と医療事務の違いと共通点、必要な資格やスキル、働き方の特徴などを初心者にもわかりやすく解説します。

事務職デビューを考えている方や、キャリアチェンジを検討している方に役立つ内容です。
介護事務と医療事務の基本をおさえよう
まずは、それぞれの職種がどのような仕事をしているのか、基礎的な情報を押さえておきましょう。仕事内容の特徴を知ることで、自分に合っているかどうかが見えてきます。
業務内容の違い
介護事務と医療事務、どちらの仕事も現場を支える縁の下の力持ちです。主な業務は、レセプト作成や受付、請求書処理、データ入力、利用者・患者への対応など幅広く、デスクワークが中心となります。
介護事務と医療事務の違い
- 介護事務:訪問介護やデイサービス、特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設で、主に介護報酬請求業務や利用者情報の管理、職員の勤怠入力などを担当します。介護記録の整理や事業所ごとの報告書作成など、制度に基づいた事務処理が多く、事務職としての専門性が求められるポジションです。
- 医療事務:病院やクリニック、診療所などの医療機関で、診療報酬請求(レセプト作成)や窓口での受付業務、会計業務、カルテの管理などを行います。医師や看護師と連携しながら、スムーズな診療運営を支える業務が中心で、患者対応の機会も多くあります。
制度や対象者の違いを比較しよう
介護事務と医療事務の違いをより具体的に理解するためには、制度や職場環境、日々の業務内容を比較してみるのが効果的です。以下の表に、それぞれの違いをわかりやすくまとめました。
介護事務 | 医療事務 | |
---|---|---|
制度 | 介護保険制度 | 健康保険制度 |
主な職場 | 介護施設、訪問介護事業所など | 病院、診療所、クリニックなど |
書類 | 介護報酬明細書、介護記録など | 診療報酬明細書、診療録など |
対応相手 | 主に高齢者とその家族 | 年齢問わず患者全般 |
制度や業務の対象となる人、扱う書類の種類が違うため、必要とされる知識や対応力も異なります。
資格取得で広がる可能性と基本スキル
どちらも民間資格が中心で、資格が必須ではない職場もありますが、知識を身につけることで採用や実務で有利になるのは間違いありません。
よく取得されている民間資格
介護事務や医療事務にはさまざまな民間資格があります。それぞれの職種に特化した資格を取得することで、業務への理解が深まり、転職や就職の際にも大きなアピールポイントとなります。ここでは代表的な資格を紹介します。
介護事務の代表的な資格
- 介護事務士
- ケアクラーク
- JADP認定 介護事務資格
医療事務の代表的な資格
- 診療報酬請求事務能力認定試験
- 医療事務管理士
- 医療秘書技能検定
これらの資格は、現場で必要となる基本知識や事務処理の流れを体系的に学べる構成となっており、初心者にとっても取り組みやすいのが特徴です。
取得しておくことで、業務理解が深まるだけでなく、就職や転職活動の際に自信を持ってアピールできる材料にもなります。
両方に求められる基本スキル
介護事務と医療事務は、それぞれの専門知識が必要とされる一方で、共通して重視されるスキルもいくつかあります。ここでは、両職種に共通する基本的なスキルについて詳しく見ていきましょう。
正確な事務処理能力
どちらの職種でも共通して求められるのが、正確な事務処理能力です。たとえば、レセプトの入力ミスや記録の記載漏れなどは、業務全体に大きな影響を与える可能性があります。
医療や介護の現場では、一件のミスが金銭面や信頼に関わる問題に発展することもあるため、細部まで丁寧に確認する力や几帳面さが重視されます。
さらに、複数の処理を並行して行う場合でも、一つひとつの作業に集中して取り組む姿勢が大切です。小さな確認作業や書類整理も怠らず、正確に業務を遂行する責任感が求められます。日々の業務の積み重ねが、職場全体の信頼性にもつながるため、常に慎重であることが重要です。
パソコンの基本操作
日常的にパソコンを使って請求処理やデータ入力、報告書作成などを行うため、WordやExcelといった基本的なソフトの操作スキルは必須です。表計算ソフトでは請求書や利用者データの集計を行い、文書作成ソフトでは報告書や通知文などの作成が必要になります。
最近では、クラウドツールや業務専用ソフトの導入が進んでおり、インターネットを使ったファイル共有やデータベース入力のスキルも求められる場面が増えています。

パソコン操作に自信がある人は、それだけで即戦力として歓迎されるかもしれません!
丁寧なコミュニケーション能力
医療や介護の現場では、利用者・患者、その家族、そして多職種スタッフとの連携が不可欠です。相手の話に耳を傾け、丁寧に対応する姿勢が信頼関係の構築に直結します。また、業務中には急な対応やイレギュラーな出来事も発生するため、柔軟に対応できるコミュニケーション力が求められます。
さらに、事務職であっても電話応対や来客対応、説明業務など、人と接する機会は少なくありません。特に高齢者やそのご家族とのやり取りでは、相手の立場に寄り添った言葉遣いや気配りが求められ、円滑な関係を築くための「聞く力」「伝える力」が必要不可欠です。
通信講座やオンラインで学べるおすすめ学習法
自宅で学べる通信講座やオンライン学習サービスが増えており、忙しい方でもスキマ時間を活用して学習を進められるようになっています。仕事や家庭の予定に合わせて、自由な時間に学習できる点が、近年ますます注目されています。
- 映像授業やeラーニング、模擬試験など多様な学習スタイルが用意されており、受講者のニーズに応じた柔軟な学び方が可能です。
- 添削や質問サポートが受けられる講座もあり、わからない部分をそのままにせず、講師からのフィードバックを受けながら安心して進められる点が魅力です。
- スマホやパソコンで学べるため、通勤中や家事の合間などのちょっとした時間も有効活用でき、場所を選ばず取り組めるのが大きな利点です。
また、学習期間や難易度も講座によってさまざまで、自分のペースや目的に合わせたプランを選ぶことができます。このように、働きながら資格取得を目指したい方や、子育て中・ブランク明けの方でも無理なく学習を続けられる環境が整っており、キャリアアップを目指す上で強い味方となるでしょう。
資格を活かして広がるキャリアパス
介護事務・医療事務として実務経験を積むことで、将来的なキャリアアップの可能性もさらに広がります。単に事務作業をこなすだけでなく、知識やスキルを磨き、職場内での存在感を高めていくことができる点が、大きな魅力です。
- 事務リーダーやチームマネジメントなど、現場の中核を担うポジションへの昇格。スタッフの業務管理や新人指導、スケジュール調整など責任ある立場を任されるケースも増えています。
- 経験を活かして、教育担当や講師、業界専門のコンサルタントとして活躍する道もあります。自身の知識を伝える側に回ることで、さらに深い専門性を培えます。
- 医療・福祉分野のバックオフィス業務(総務・経理・人事など)への転職も視野に入ります。職場で培った事務処理能力や対応力は、他部門でも重宝されるスキルです。
- さらに、介護・医療分野のIT化やDX(デジタルトランスフォーメーション)に伴い、電子カルテやレセプトソフトを扱えるスキルを活かして、IT系サポート職へのキャリア転換も可能です。
このように、現場での経験をベースに、自分の強みを活かした多彩なキャリアパスを描けるのも、介護事務・医療事務の大きな魅力です。自分自身の将来像を明確にしながら、スキルアップを重ねていくことで、より充実した働き方が実現できます。
介護事務が未経験でも安心して始められる理由
介護事務は、未経験からでも安心してスタートしやすい職種として注目されています。特に、介護業界に携わったことがない方や、ブランクのある方、事務職自体が初めてという方にも開かれた門戸が用意されています。
基礎的な知識を学べる体制と、丁寧な現場サポートが充実しているところも多いため、ゼロからのスタートでも不安を感じにくいのが大きな特長です。
- OJTや先輩スタッフの手厚いサポートがあり、業務の手順や必要な知識を段階的に学べる
- 「経験不問」「未経験歓迎」の求人が多く、介護業界が初めての人にも積極的にチャンスが与えられる
- 研修マニュアルやマニュアル動画、eラーニングなどの学習コンテンツが整備された事業所も増えており、独学が苦手な方でも安心
- 一つひとつの業務を確実に覚えていけるよう、ステップを踏んで指導してもらえる職場が多く、初めての方に優しい環境が整っている
「事務職は経験がないから自信がない」「パソコンスキルに不安がある」といった理由で一歩を踏み出せない方も、実際の業務を通じて着実に成長していけます。業務内容も比較的定型的なものが多く、ルーティンワークが中心なため、慣れてくれば安定して働き続けられるのも魅力です。
また、介護事務は医療事務に比べて対人対応が比較的少なめで、事務作業に集中しやすい環境が整っている職場もあります。特に、医療事務が日々さまざまな年齢層の患者さんを幅広く対応するのに対して、介護事務では比較的同じ利用者さんと継続的に関わることが多く、落ち着いた人間関係の中で業務に取り組めるのが特徴です。
こうした点は、人と接するのが苦手な方や、静かな職場で落ち着いて仕事をしたいという方にも向いています。さらに、デスクワーク中心で身体的な負担も少ないため、長期的に無理なく働きたい方や、子育て・家事・介護などと両立したい方にもぴったりの職種です。
柔軟な働き方が叶う職場が多い
介護事務の仕事は、ライフスタイルに合わせて柔軟に働ける点でも多くの人に支持されています。職場の形態にもよりますが、パートや派遣、正社員など多様な雇用形態があり、自分に合った働き方を選びやすいのが特徴です。
- パート、派遣、契約社員、正社員など多彩な選択肢があり、ライフステージに応じて働き方を調整できる
- 時短勤務やシフト制、午前のみ・午後のみなど、無理のない勤務スタイルが可能
- 書類作成や請求業務など、一部の事務作業は在宅勤務やリモート対応が可能な職場もあり、通勤の負担を軽減できるケースも
特に、子育て中の方や親の介護をしている方にとって、家庭の事情に応じて働き方を選べるのは大きなメリットです。急な用事や体調の変化にも柔軟に対応できる環境が整っているため、安心して長く続けられる職場が多いのも介護事務の魅力です。
自分に合った働き方を見つけよう
介護事務も医療事務も、現場を支える大切な仕事です。それぞれに必要な知識やスキルは異なりますが、未経験からスタートしやすく、学びながら成長できる環境が整っています。
安定性とやりがいを求めている方、ライフスタイルに合った働き方を目指す方にとって、どちらも魅力的な選択肢です。

まずは自分の興味や適性を知ることから始め、理想の働き方を実現する一歩を踏み出してみてください。